FILM VIRUS

映画鑑賞、お金、日々思うことについて

『ブギーナイツ』(1998)

 

クラブでバイトをしていたエディが、ポルノ映画監督のジャックにその巨根を評価され、文字通りズブズブとポルノ業界へとのめり込んでいく。

「ポルノ業界を描く」「巨根」という時点で、人を選ぶことは確かである。しかしこの映画では「時代が移り変わること」が描かれており、実はエロチシズムとしてのポルノ描写は尺も短く、激しくない。実際にこの映画のアメリカ公開はR rating(18歳以下は保護者同伴必要)であり、本来ポールはNC-17(いわゆる18禁)で撮りたかったそう。プロデューサーの指示により前者となったという経緯がある。果たして保護者同伴してブギーナイツを見に来た青年はいたのだろうか。

さて「時代の移り変わり」というのは、「これからはビデオの時代であり映画を撮るのは止めろ」とジャックがプロデューサーが言われるシーンに印象深く刻まれている。「マスをかき終わった後もなぜか見てしまう映画を作りたい」とジャックは強く語る。例えばミステリー映画も謎解きがわかってしまうと一見その映画の価値が失われるようにも思える。しかしそれでも「その後を見ていたい」「なんならもう1回見たい」と思わせる映画が良い映画の証である。そんな思いがジャックにあるのではないだろうか。

隆盛を極めた1970年代が終わり、劇中でも1980年代に突入したところで彼らは衰退へと向かっていく。エディはヤクのやりすぎで商売道具が不能がちになりジャックとは縁を切り、また拙い自分本位な音楽に傾倒する。ジャックは自分の映画が撮れなくなり、安い素人企画の街ナンパモノの「ビデオ」をジャックも出演しながら撮影することになる。そしてそれを若者に馬鹿にされたジャックはどういう行動に出るか。

ポール・トーマス・アンダーソンは、デジタル撮影が主流になった現在でもフィルムで撮り続けている監督だ。一見すると時代遅れの烙印が押されてしまうが、この監督がそのような評価を受けているだろうか。同じくフィルムを愛するタランティーノ、JJエイブラムス、ノーランはどうであろうか。この映画のラストを飾る長回しの中でジャックは所有のステレオを、大音響を出せつように改造しようとアドバイスをもらう。「大音響は必要ない。俺はメローサウンドが好きなんだ。」とジャックは言う。

製作に時間がかかり寡作な映画監督であるが、新作が公開されると期待感余って緊張さえしてくる作家の一人である。これからもダーク・ディグラーの股間同様に映画界を盛り上げてほしい。(2017年のスカパー!アダルト放送大賞時のしみけんさんのギャグです。)

 

 

 

ブギーナイツ (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

Boogie Nights: Music From The Original Motion Picture

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  • 発売日: 1997/09/23
  • メディア: CD