『ブラック・レイン』(1989)
「今のアメリカにあるのは映画と音楽だけだ。日本は機械を作って未来を築き平和を手にした。」高倉健のセリフ。個人的にそのアメリカ最高じゃんというのはさておき、今の日本では口に出せない台詞。その「平和」はいつまで続くのだろう。
今作の強い評価ポイントは、その撮影だろう。一気に大阪がOsakaに。ブレードランナー的な近未来アジアの世界に染め上げた。はじめ歌舞伎町でのロケを予定していたが、警察の交通規制許可がほとんど降りなかったため、ロケ地が調整された。警察の映画なのに警察が協力してくれないのは面白い。むしろ日本の警察は映画内外どちらも協力してくれないと見るべきか。
作中で「ブラックレイン」についての言及がある。直接にはアメリカによる空爆で発生する煤(すす)の雨のことを示すが、個人主義が義理人情の価値観を破壊した(その結果佐藤のような存在が生まれた)ことの象徴として菅井は語る。
これは松本にも同様のことがあてはまる。この映画では「組織の決まり」を守り続ける弊害、つまり集団主義の邪の面がたびたび描かれる。
個人主義か集団主義かの白黒ではないが、少なくとも菅井の言うような「価値観の破壊」=「ブラックレイン」という例えは間違っているように思う。仮に集団主義が良いものだとしても、個人主義が持ち込まれたことで壊れるようなものではない。互いに少しずつ理解し合った、ニックと松本はラストで親友となった。
みんな大好き「ブレラン」
ドュニ・ヴィルヌーヴによる正統続編。「ブラックレイン20XX」もお願いします。